Teamedia News Vol.90「茶酒の種類と今後の展望」

「茶酒」の種類と今後の展望

現在、中国ではお茶そのものを飲むだけではなく、お茶を利用した派生商品の開発が数多く進められています。

お茶の成分を抽出したサプリメント、茶葉の成分を活用したマスク、茶の香りを活かした香水や白茶エキスを利用した化粧品などです。そのような中で、最近、特に商品を多く見かけるようになったのが、お茶を利用したお酒である「茶酒」です。

この「茶酒」の市場性と種類、将来の展望について、先日、中国農業科学院茶葉研究所が発行する季刊誌『中国茶葉』に論文が掲載されていましたので、今回はその内容についてご紹介します。

 

保健酒市場は2025年に500億元市場へ

「茶酒」は酒類のジャンルでは「保健酒」に分類されます。通常の酒ではなく、機能性を高めたものという位置づけであり、この「保健酒」の市場規模は2013年の174.2億元から2022年には360.4億元と2倍以上に急成長しており、2025年には500億元を突破することが見込まれており、年率11%前後の急成長市場となっています。伝統的な酒類市場よりも成長が見込めるジャンルとなっています。

 

「茶酒」の種類

「茶酒」はその製法の違いにより、大きく分けて3つのタイプがあるとしています。すなわち、

 ・発酵型茶酒

 ・ブレンド型茶酒

 ・蒸留型茶酒

です。

 

1.発酵型茶酒

発酵型茶酒は茶葉を主要な原料とし、穀物や酵母あるいは糖類を添加することで、発酵を進めるものです。発酵により、アルコール、アミノ酸、風味物質(エステル類、アルデヒド類など)が精製され、独特の風味と味わいが生まれます。

発酵型茶酒は、その製法によって、さらに固態発酵型茶酒と液態発酵型茶酒に分類されます。固態発酵型茶酒は、醸造過程において、茶葉をもろみの中に入れ、よくかき混ぜて発酵を行うものです。一方、液態発酵型茶酒は、茶液を主要な原料として、そこに酵母、糖、有機酸などを添加して、発酵醸造するものです。

 

2.ブレンド型茶酒

浸出・ブレンド方式を採用し、茶葉の有効成分と様々なベース酒を組み合わせるものです。お茶の爽やかさとお酒のまろやかさを両立させます。

浸出液の違いにより、水浸出法(水にお茶の成分を溶かしだし、ベース酒とブレンド)と酒浸出法(酒を溶媒として、お茶の成分を抽出し、調合)があります。

3.蒸留型茶酒

蒸留型茶酒は、主に穀物を原料とし、茶葉を添加発酵、蒸留、熟成、ブレンドという工程を経て作られます。

発酵後、蒸留型茶酒は蒸留され、揮発性成分が分離されますが、蒸留工程では茶葉の有効成分の一部が保持されます。

これにより、伝統的な蒸留酒の特徴を保ちながら、茶葉の香りと風味が加わり、独特な茶酒の風味が生まれます。

 

「茶酒」製造技術の技術革新

茶酒の製造技術においては、様々な技術革新が起こっています。そのうちのいくつかを紹介します。

1.発酵技術

○微生物の選択:独特の風味物質を精製する酵母株を選定し、品質向上を図っています。

(例)X16酵母:濃厚な果実香と芳醇さ
RB2酵母:テルペン類を多く

71B酵母:花香・果実香を引き出し、
カフェインを減らす

○発酵条件の制御:温度、時間、pH等の最適化により、茶酒の風味と味わいを改善。

(例)サトウキビ茶酒では、14℃の低温発酵が色と品質を最大化

 

2.ブレンド配合技術

○異なる原料や成分を組み合わせ、風味豊かな製品を開発。

(例)ジャスミン緑茶をベースに甘酒や牛乳を組み合わせた調製酒、桃と信陽毛尖を使った緑茶酒

 

3.風味品質の鑑定と調製技術

○香気成分の鑑定:プーアル熟茶酒は香りが特に優れる。プーアル生茶酒は香りは顕著だが、味にはやや辛みがある。米酒は米の香りを爽やかな清香が特色で純粋な味になる等。

 

4.茶酒の機能開発

○抗酸化作用:茶葉には茶ポリフェノール、カテキン、フラボノイドなどが豊富に含まれる。単叢茶酒にはカテキンと没食子酸が含まれ、抗酸化作用の根拠となる。

 

○保健機能:茶酒の中には肝機能の改善に効果があるとされるものも。黒茶酒の中には、脂肪性肝疾患の改善が見られる。

 

課題と今後の展望

課題としては、製造過程で色沢の不安定さや沈殿が生じやすく、外観や品質に影響を与える。貯蔵中に酸化・重合反応が起こり、茶ポリフェノール減少、褐変、沈殿増加を招くことがある。

しかし、将来的には風味の多様化と機能化の方向へ発展し、抗酸化、代謝促進、神経系の保護などの健康機能を掘り起こすことで、多様な消費者のニーズに応えていくことが期待されます。

 

単純に茶とブレンドするというだけではなく、様々なスタイルの茶酒が開発されています。こうしたものが、日本に輸入される日も来るのでしょうか。